考えたこと

小林勝彦の思考を残しておくブログ

「私のお気に入り 〜マンガにまつわる成長ストーリー〜」長野美専授業

今回は授業でのレクチャーそのままの記事です。
風邪でダウンのため欠席、授業では担当の先生にこのブログを紹介してもらっています。
 
授業は「クリエイティブワーク総論」といい、クリエイティブの学びの意義を様々な角度から考えることで、学生が何にどのように取組み、どこまでやればいいのかを正しくとらえていくための理論系科目です。
ゲスト講師が登場し、それぞれの歩みや実際の仕事を紹介するので、学生は自分のキャリアモデルとしても見ることができ、正に“クリエイティブの学びを通して人の成長を支援する美専”の基幹的な授業となっています。
 
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学生の皆さんおはようございます。
興味深い企画に、出席できず残念です。
風邪をひいてしまいました、申し訳ありません。
 
最終回のクリエイティブワーク総論では「クリエイティブの学びの進路を選んだきっかけとなったもの」や「クリエイティブなアイデアの源泉となるもの」を“私のお気に入り”として取り上げ、 その角度からクリエイティブワークの意義を導き出す目的を持っています。
授業の終わりには、皆さん一人ひとりのお気に入りから導き出されたその答えがレポートにまとめられるでしょう。それが今日の学習目標です。どうか、頑張って取り組んで下さい。
 
そのために、私も他の先生方に混じって「お気に入り」を紹介します。少々古い話で恐縮ですが、ご参考にお聞きください。
それはこの「COM」というまんが本です。たくさんあるでしょう。COMとの最初の出会いは、確か中学2年生の頃。この本は月刊だったので、毎月楽しみにしてちょくちょく手に入れ、このようになりました(貸し出して、戻らないものなどもありますが…)。ここに並んでいるのは本紙の他に付録とか、やがて発行元の「虫プロダクション」(戦後日本のまんがの第一人者、手塚治虫のアニメーションプロダクション=当時)の経営難により大人向けの「COMコミックス」に変貌したものや、廃刊後の復活版もあります。
よく見ると“まんがエリートのためのまんが専門誌”というキャッチフレーズがあります。これこそが、“ちょっと違うもの好き”の私をとらえたコンセプトでした。当時少年まんが誌では「冒険王」「少年」「ぼくら」というような月刊漫画が盛況でした。扱う題材も敵味方のわかりやすい正義追求もの、ロボットもの、時代劇ものなどが定番でした。しかしこの「COM」は、一歩進んだ“まんが好き”を対象にして、また男女も問わず、人間性を追求したもの、あるいは実験的な表現のもの、また当時の若者が置かれた時代性に迫ったものなど、それまでまんがが扱ってこなかった新しい分野に踏み込んだ作品を載せていました。青年まんがという新しいジャンルが生まれたのも「COM」のムーブメントと深いつながりがあります。また新人漫画家の登竜門としてコンテストも行い、ここからは多くの新人まんが家が生まれています。ちなみに手塚治虫のライフワークの「火の鳥」はここで連載されていました。
 
奥の方に並べてある「ガロ」という本も目に付くと思いますが、これもまんが誌で、さらに前衛的な新しいまんがに挑戦しています(これもお気に入りなのです)。実はこの「ガロ」を強く意識して、後に「COM」が生まれたようです。
 
さて、今回なぜこれを取り上げたのかですが、これまで述べたように「COM」は幾つかの革新性を持って生まれたまんが誌です。これまで知らなかった“アナザーワールド”がそこにあり、これからの自分をどこか重要なところへ連れて行ってくれる、幼いながらにもそんな直感を抱けた大切なものに思えるからです。
 
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「COM」との出会いからのストーリーを分析したのが、このビジュアルです。解説しますのでご覧ください。
まず、平凡なまんが好きの少年がいました。この年頃は思春期と呼ばれ、自分自身への関心を強く持ち始める頃です。他の人とは違う自分、自分とはどうゆう人間なのか、などの問いに迫られている時です。そんな頃、“まんがエリートのためのまんが専門誌”「COM」と出会い、ただのまんが好きが変わりました。自分が重要視するものが、他の人はそうは思っていない、そんな関係性の中で他人とは少し違う自分というものを自覚しました。そしてどこかにいる同類を求めるように、行動を起こしました。自分でもペンや烏口を手に取り、まんがを描き始めました。また、高校へ上がると都会の出版社を巡り、「COM」の虫プロにも行きバックナンバーを仕入れ、当時売り出し中の女流まんが家も訪ねました。この経験では出版社の仕事現場を見たり、やがて本に刷り込まれるイラストの原稿をもらったりして、まんがへの興味から、印刷に関わる物事への興味へと視界が広がりました。また次第にグラフィックデザインに興味が湧き、地元のコンペなどへも応募を重ねました。また、長野のデザイン会社(ユニークというプロダクションで今でも市内にあります)にも見学もしました。これらの行動は自分の行き着く場所、将来就く仕事をそれとは無く意識し始める重要な経験でした。そして実際に、ほぼそんな感じの未来を迎えました。
 
「COM」のクリエイティブが導いた私の成長ストーリーはいかがでしたか?今となれば、起こるべくして起きた「お気に入り」にまつわる運命と言えます。
 
さて、みなさんの番になりました。ご健闘を。
 
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2016/01/18
長野美術専門学校 授業「クリエイティブワーク総論」より