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考えたこと

小林勝彦の思考を残しておくブログ

平成27年度長野美術専門学校入学式校長告辞、一つ目の要点

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様々な考え事が、交錯する中での入学式、自分を「告示をする校長」に切り替える。
やはり今回も要点と順番を簡単にメモし、後は事前に巡らせた考えをその場で整理しながら述べていった。告示は祝辞とは違う。セレモニーに於いて、入学者の前に立つ最初の教員。そうゆう関係性にふさわしくあるべき一言だ。重要である。本来こう言ったほうが良かったというところを修正して、二つの要点の内、今回は一つ目を以下にまとめる。


ただいま入学を許可された皆さんに、皆さんの前に本校で最初に立つ教員としての話を、校長より聞いたいただきます。
今日聞いていただくのは、一つには「学生とは、学ぶ者とは」そしてもう一つには「学生とその周りの方との好い関係」、この二つです。

ここに、完全無欠の球(真球)をイメージしましょう。完全無欠の球は、真半分に割って全くの対象形ができる立体です。真中心を持つのも完全無欠の球ですね。真中心は、表面上に位置するどの点へも等距離となっています。従って、その表面は歪みがありません。
この完全無欠の球を、学びの理想の成果にたとえて一つ目の話をしたいと思います。
多くの考えでは、この成果を得るためには、何がしかの立体(例えば、切り出した木材の塊)の外形を整えていく作業を想像するでしょう。完全無欠の条件を満たす塊をつくるためには削ったり、あるいは足したり、また、表面を滑らかにするためには、こすったり、塗布したりと相応の技が必要になります。この技が、社会の産業構造や、経済関係からの要望に好ましく応えられるようなレベルになると、それは、「即戦力」と呼ばれ、本校のような専門学校の卒業時に学生が持ち合わせているべき力と言われています。私達の仕事の分野では、広告物のデザインワークに際し、パソコンを効率良く操作できることなどがその力を指しているのてしょう。もちろんパソコン操作、IllustratorPhotoshopなどのビジュアルクリエイターのとっては強力な武器の扱いは、本当に必要なことであることは間違いないのではありますが、ここで学ぶべき最も重要な課題としたいことは、別のことです。
それは、球体の外形や表層の繕いではなく、芯の部分の整えであります。完全無欠は、芯の硬さやきめの細かさなどの充実によって支えられるという考えから導かれる課題です。この課題に挑んで身につける力を、本校では「真戦力」と呼んで、来るべき社会が本当に必要な力、クリエイティブを学ぶ者が身につけるべき真の力であると考えています。
芯の充実を求めるなら、しなければならないことがあります。それは、既にできているものを加工することではなく、1から調べ直すことです。そうだと思い込んでいる答えではない正解はたくさんあります。一見何もないような風景から、見つけられる真実は無限にあるのです。そして答えを見つけ出す学び方には、一つの重要な姿勢が不可欠です。それは、自ら調べ直すということ、そうに決まってると思えることも疑い、一度実直にやってみること、そのことができる人はみんな学ぶ人だと言えます。皆さんはそんなことができる時と場を与えられた者、学生なのです。
学生の皆さん、これより芯の充実をこそ図ってまいりましょう。

(次回、入学式告示、二つ目の要点にづづく)

平成26年度長野美術専門学校卒業式での校長式辞

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お務め柄、スピーチや講習での論述の機会が度々あるが、あらかじめ要点を構想し順序付け、話しながらまとめていくのが、私のいつものやり方だ。しかしせっかく考えたものなので話しては揮発していくのも、もったいないかと思い、また自分の思考をさらに深める意味でも、そしてうまく伝えることをできなかった悔しさを晴らすためにも、ブログにまとめて残していくことにした。

まずは、平成26年年度長野美術専門学校の卒業式での式辞をまとめてみる。10分の持ち時間を倍の20分にしてしまった。式進行者には顰蹙もののお務めである。原稿を読めば、数分で済む内容だから、もっと要領よくしなければ…。今回は「創造的な造形能力」ということについて以下のように述べた。

 

本校での学びの基となっている理念体系の中ある信条について、改めて聞いてください。それは「クリエイティブこそ社会形成の要」というものです。その意味は、あるべき社会は創造性無くしては築いていけない、という考えを示したものです。

美専生はこの考えのもとに、学びを進めているのですが、学んで、何を身につけるのかというと、それは「創造的な造形力」です。

 

それでは「創造的」とはどんなものなのでしょう。文芸批評家として世界の文化をリードしたハーバート・リードは創造的という言葉について「我々は個性的で、新しく工夫され、感情のこもったものを指し示す言葉が欲しい。人間と、彼の意思によって形づくられたものとの間に存在する関係を指し示す一つの言葉が欲しい。つまり、我々の理想が、現実に及ぼす効果を表す言葉、我々が愛する仕事を表すような言葉が欲しい」と言っています。

ここには創造性についてのいくつかの重要な示唆が含まれています。そのひとつに個性的で、新しく工夫され、とういうものが挙げられていますが、我々もまた「個性の発揮」を学びました。個性がゼロから生み出す突飛な事柄を示すのではなく、まだ発見されていない自分のリソースであり、発揮とはそれを見つけ、目に見えるものにすることであると学びました。

 

次に「造形力」とはどんなものなのかも、改めてまとめてみましょう。狭い意味でよく言われるのは、立体的なものを作る工作力ですが、我々が造形の対象としてきたものは、単に立体にとどまらず、すべての色と形のあるものでした。本校の学びのベクトルを示す「修学ライン」を見てもそれはわかります。

日本の美術文化のリーダー勝見勝は「造形教育の目標は造形能力が、社会のあらゆる職場あらゆる分業の分野においてそれぞれの置かれた条件に適応しながら、柔軟な実力を発揮するところにある」と言っています。我々は、すべての色と形のあるものに一貫して存在する造形の原理を学び、先達、勝見勝の教えの通り、今まさに、学び得た力を様々な職場に活かそうとしているのです。

 

また、同じく勝見勝が当時予言したように、今、アマチュアの時代が到来しています。パーソナルコンピュータの普及で専門家でなくてもある程度のデザインワークができ、相応に暮らしぶりの向上を図れるようになってきました。この時代のプロの役割とはどんなものなのでしょう。

美専展の一般の方からの評価に、目指すべきプロとは何か、への答えがあるはずです。なぜなら美専の先生方は学生の皆さんをプロへ、プロへと導いて来てくださったからです。そして総合制作は、みなさんがその導きを得て自らが獲得したプロの持つべきリソースの集大成のはずだからです。展覧会ではこんな言葉を聞くことができました。「美専生の制作はよく考えられているね」「完成度がとても高いですね」その言葉が学生の取り組みに対し与えられたのは、制作の成果に目指すべきプロの着想、構想力や、そしてそれを実現する技術力、それを目指す志が認められたからなのです。

また、「この力を活かす場がない」という言葉も聴きました。これは創造的な造形力は培っているのは認めるが、今度はそれを社会に活かす事が難しいという意味で、大変悲しい感想のように聞こえますが、逆に考えれば、活かしたい、活かすべきだとも認めていただいたということだとも言えるのです。

学生という、未完全な人間がつくった過渡期の未完成な制作物と安易ににみなすことができない、いやむしろ、社会にとって必要な力がそこに現れていたから、これからの時代にプロが果たすべきことがそこにあったと、予感、実感して頂いたからこその言葉であります。

 

美専の卒業は一つの通過点です、我々はまだまだ学びを続け、自由な創造性に富んだ新しい社会をつくって行きましょう。

 

2015.03.13:Hotel KOKUSAI 21:Nagano City